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レジリエンス(逆境力)

レジリエンスとは、心理学の用語で、落ち込みから立ち直る心の弾力性です。

もともとは物理学的な言葉で、力を加えられてゆがんだものがもとにもどる弾力性を指します。

この写真のように、最近のめがねのフレームは、弾力性があって、折れにくくなっています。そういう弾力性を、人の心にあてはめて、心の回復力という意味で使われています。

大地震などの災害では、ほとんどの人が落ち込んでしまいます。 しかし、そこからの立ち直りの様子に個人差があることが注目されました。

その立ち直る力、心の弾力性をレジリエンスと呼び研究されてきました。

レジリエンスには2つの側面があります。

一つ目は、こまったできごと(ネガティブライフイベント)からの立ち直りです。 こまったできごとというのは、大規模災害だけでなく、事故や友だちとけんかしたこと、日々のちょっとしたストレスを感じる出来事などをさします。

海外の紛争地、あるいは日本でも貧困や家庭崩壊、親の精神疾患など、良好でない養育環境で育つ子がたくさんいます。

研究者はそこで子どもたちにどんな問題が起きるかを調査しました。 たしかに、問題行動や抑うつ的になる子がたくさんいました。それは、正にそういう環境に起因することです。 しかし、同時に、そんな劣悪な環境にありながら、適応的な育ちをする子もいることに研究者は驚きました。

この人が持っているしなやかな強さを「レジリエンス」と名付けて研究されるようになったのです。

レジリエンスそのものをシンプルに視覚化したのがこの立ち直り曲線です。

実際の回復プロセスはこんなに単純なものではないでしょう。また、実際に立ち直れなくて失意の底にいる人もいます。
しかし、あえて、必ずいつかは立ち直れるというメッセージをおくることで、いまはこの線の底にいる人も、やがてはもどれるんだという見通しのようなものが持てるかもしれません。

これを「立ち直れる自信と見通し」と呼んでいます。 単純な図であるが故に、心のより所としてのイメージになりやすいと考えます。

レジリエンスはだれもが持っている資質です。また、レジリエンスは育てることもできます。 もちろん遺伝的なものや乳児期の養育による気質的なものは大きい要素です。

しかし、安定的な人間関係や、教育環境によって、精神的弾力性を育むことができます。 また、学校の授業などで、考え方の方法を学んで認知面での向上をめざすことやストレスマネジメント教育により、ストレス対処技術や体と心の健康を増進させることができます。 クライアントの抱える問題を探るべく人間の「弱さ」に焦点をあててきた心理学が、逆境から立ち直る人の「強み」に気づいた時にレジリエンスという概念が生まれました。

引用参考文献
深谷和子・上島博・子どもの行動学研究会(2009)
『子どもの「心の力」を育てるーレジリエンスー』明治図書出版

(北海道教育大学附属小中学校学校カウンセラー上村雅代)