-私たちの命を守り健やかな成長を促すために-

自殺に関する総合的な対策の中で、教育が果たす役割の重要性を改めて確認し、温かい社会や組織づくりを促進する教育を展開します。特に学校や学級においては、学習者に自己有用感や自尊感情と他者存在の意義を実感させ、温かで信頼し合える集団生活を送ることができるようにする学校組織マネジメントを重視します。自殺という喫緊の重要課題については、子ども達にはSOSの出し方教育、教師や保護者にはSOSの気づき方教育、両者併せて自殺対策学習を展開します。

自殺総合対策における「命の教育」の取組み

「生きる支援に向けた児童生徒のSOSの出し方教育~国の政策の今後の方向性~」
自殺総合対策推進センター長・京都府立医科大学特任教授 本橋 豊

平成28年4月に自殺対策基本法が改正され、「生きることの包括的支援」が自殺対策の理念であることが明記されました。若者の自殺対策、とりわけ児童生徒の自殺対策として「SOSの出し方教育」の重要性が認識され、教育現場での普及が喫緊の課題として注目されています。すべての子どもにライフスキルとしての「SOSの出し方教育」を行い、子どもたちから発信されたSOSを周囲の大人たちが的確に受け止めることができるようになることが「SOSの出し方教育」の事業を進める上での大きな目標です。最終的には、「SOSの出し方教育」を受けた子どもたちが、将来にわたり自殺のリスクを背負わなくてすむようにすることが望まれます。

自殺対策においては連携と協働がキーワードです。自殺対策はすべての人が関与すべき「みんなの仕事」であり、保健医療や教育関係者や家庭や地域などのすべての人々が関わり、行動し、支援することが必要です。連携は響きの美しい机上の修辞ではなく、それぞれの現場で地道な人間関係の構築に基づき、Action Programとして実現される必要があります。そのためには、現場の智恵と個別対応のノウハウを活かすことはもちろん必要ですが、同時に制度やAction Programを展開するための組織としての取組や仕組みづくりも重要です。ともすれば、自殺対策を「専門家の仕事」と位置づけて、「専門家に任せる」「素人は口を出さない」といった対応が取られることがありますが、このような傍観者的対応を取ることがないようにしなければなりません。学校の場においては、学校医、スクールカウンセラー、精神科医といった「専門家」に任せれば安心といった発想からいったん離れることが必要です。自殺対策は「みんなの仕事」であり、当事者の目線で普通の人が関わっていくのだという意識変革が求められます。学校の現場であれば、校長を始めとする学校管理者、一般教諭、養護教諭、事務職員、保護者、地域住民、教育委員会、保健所、福祉事務所といった様々な職種や機関の人々が、専門家目線ではなく当事者目線で関与することが求められます。

国や自治体の施策はともすれば専門家志向になりがちですが、専門家の限界を知ることも大切です。児童生徒の「SOSの出し方教育」の政策展開にあたっては、「自殺対策はみんなの仕事」という考えをきちんと理解し、教育の現場、地域の現場、保健医療の現場などで連携と協働を確実に進めていくことが必要です。

平成28年度の厚生労働科学研究費補助金事業(学際的・国際的アプローチによる自殺総合対策の新たな政策展開に関する研究:研究代表者・本橋豊)の研究事業の一環として、北海道教育大学と自殺総合対策推進センターが協働して自殺総合対策における「命の教育」プロジェクトが開始された意義はきわめて大きいと考えます。北海道教育大学教職大学院の正規教育のカリキュラムに「SOSの出し方教育」を含む自殺対策の授業を組みこみ、将来教職に就く可能性のあるすべての学生に自殺対策の重要性を学んでもらう仕組みづくりが始まりました。また、教員の免許状更新講習時に自殺対策の講習時間を組み入れる試みも始まっています。これらの北海道教育大学教職大学院の先駆的取組が全国に広がることにより、学校教育における自殺対策の推進に着実に進展することになると期待しています。

実践事例

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ゲートキーパーについて

ゲートキーパーとは
悩んでいる人に気づいて、声をかけ、話をよく聴いて、必要な支援につなげ、見守る人のことです。
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ゲートキーパー手帳 

SOSの出し方・気づき方

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北海道教育大学教職大学院
 
子供(こども)のSOSの相談窓口(そうだんまどぐち)

皆(みな)さんの不安(ふあん)や悩(なや)みを受(う)け止(と)める相談窓口(そうだんまどぐち)について、連絡先(れんらくさき)を下記(かき)のようにお知(し)らせします。一人(ひとり)で苦(くる)しまず、ぜひ利用(りよう)して、話(はなし)をしてみてください。

## 「24時間(じかん)子供(こども)SOSダイヤル」について
法務局(ほうむきょく)・地方法務局(ちほうほうむきょく)子(こ)どもの人権(じんけん)110番(ばん)  0120-007-110(全国共通)
受付時間 平日午前8時30分~午後5時15分

(こころが苦しい方へ、ぜひご利用ください。)

(18才までの子どもがかける電話です。)